「ネジザウルス」の逆襲

溝がつぶれたネジでも外すことができる「ネジザウルス」という工具をご存知でしょうか。
この工具は、大阪に本社を置く株式会社エンジニアという従業員数十名の中小企業が新たに生み出し、発売以来大ヒットとなっております。
ネジザウルスは製品そのものも画期的なアイデアから生まれたものでありますが、その販売方法も大阪の会社ならではの独創性溢れるものでありました。
このようなヒットにより、同社は全国発明表彰「日本商工会議所会頭発明賞」や文部科学大臣表彰「科学技術賞」など、多くの賞を受賞しております。
同社社長の髙崎充弘さんによるヒット商品を生み出すためのコツは、「「ネジザウルス」の逆襲」という書籍でも紹介されています。
私も以前に髙崎社長の講演会を聴いたことがあり、ヒット商品を生み出すまでの苦労話や開発のコツが非常に参考になりましたのでここで紹介したいと思います。

MPDP理論の活用

髙崎社長は新商品を開発してヒットさせるためには、マーケティング(Marketing)、知財(Patent)、デザイン(Design)、プロモーション(Promotion)の4つの要素が大事であり、これらの頭文字を取ってMPDP理論と名付けています。
そして、4つの要素全てが揃わなければ商品はヒットしないと長年の開発の経験を積み重ねることにより悟ったとのことです。
とりわけ中小企業では大企業と比較して開発や宣伝に費用をかけることができませんが、プロモーションについては独創的なアイデアをひねり出すことによって低予算でも様々な情報発信が可能になります。
最近はYouTube等の動画メディアやTwitter等のSNSを中小企業でも独自で持つことができるので、これらのツールを活用することにより大企業に負けない情報発信が可能になっています。
また、ユーザを満足させるためには機能だけではなくデザインも大事になってきます。
そして何より、自社の新商品が大ヒットすると必ず他社が二番煎じの商品を出してくるので、特許権等の知財を活用して模倣を防止する必要があります。
また、特許は中小企業が軽視しがちですが、企画の段階で調べておかないと新商品が実は他社の特許権を侵害しているということにもなりかねません。

知的財産管理技能検定を活用

株式会社エンジニアでは社員に知的財産に関する基礎的知識を身につけてもらうために、国家試験(技能検定)である知的財産管理技能検定を受験することを会社として推奨しているようです。
企画や開発を行う社員だけではなく、営業や調達を行う社員も知的財産に関する知識を身に着けることができれば、社外の方との交渉において知的財産に関して大きなトラブルとなってしまうことを抑制することができます。
例えば、よくありがちなのが特許出願を行う前に社長や営業マンが新商品を外部に発表してしまい、その後の権利取得が難しくなるケースがありますが、これも知的財産の知識が社内で共有されていれば防ぐことができます。
また、受験勉強を通じて知的財産に関して基礎知識を習得しておくことにより、外部の弁理士等の専門家とのコミュニケーションもスムーズに進みます。
知的財産管理技能検定は1級から3級までありますが、3級は2カ月ほどの勉強で合格率が60%と比較的高いため、まずは比較的簡単に取ることができる3級の資格取得を狙ってみるのもいいかもしれません。