共同研究、共同開発の大まかな流れ

近年、オープンイノベーションの機運の高まりにより複数の企業や大学が共同で研究や開発を行うことが増えています。
企業連携によるイノベーションを成功させるにあたって、最初の契約上の取り決めが非常に重要になってきます。
連携相手が決まるとまずは協議を開始しますが、その際に秘密保持契約を締結します。
そして、技術検証(PoC)を行い、問題がなければ共同契約契約や共同開発契約を締結することになります。
このように、共同研究、共同開発を行う際にいくつかの契約書を締結することになりますが、中小企業やスタートアップが大企業と契約を締結する場合は大企業に過度に有利な契約内容となってしまうケースが多く見られます。
この場合、共同研究や共同開発で生み出された成果が一方的に大企業に搾取されてしまうおそれがあります。
このように中小企業やスタートアップが不利な契約を強要されることを抑制するために、経産省では「研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書」をウエブサイトに提示しています。
https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200630006/20200630006.html
このモデル契約書はスタートアップ向けとありますが、スタートアップ以外の中小企業にとっても大いに参考になると思います。

共同研究、共同開発の前に自社技術について特許出願を

共同研究や共同開発を行うときに留意しなければならないのが、それまでの自社独自の技術と、他社との協働により生まれる成果とを切り分けることです。
この切り分けがうまく行かないと、将来共同研究や共同開発の成果を提携先の会社と共同で特許出願するときに、自社独自の技術も共同出願の内容に含まれてしまうおそれがあります。
このようなトラブルを未然に防止するためにも、共同研究や共同開発を行う前には自社独自の技術を明確にする必要があります。
例えば公証役場で公証を取ったりラボノートをつけたりする方法がありますが、一番明確かつ確実なのは自社独自の技術を特許出願してしまうことです。
このことにより他社との共同研究や共同開発による成果と明確に区別することができるようになり、またもし将来に提携先が勝手に自社技術を特許出願してしまった場合でも、先行して自社が特許出願を行っておけば提携先の特許出願を拒絶に導くことができます。
このように、共同研究や共同開発を検討する際に、自社技術の棚卸しを行い、もし独自の技術があれば特許出願を検討することをお勧めします。