特許権、意匠権は後発の参入による価格競争を防止する

ヒット製品や新サービスを世に出すにあたり、新たな技術を収益化するにはマーケティング、製品開発、プロモーション、量産化等の様々なステップを踏む必要があります。
特に今まで世に出ていないような新製品を開発する場合や新規事業を立ち上げる場合は試行錯誤を重ねる必要があり、費やされる労力や費用も大きくなります。このように苦労して開発した商品やサービスがヒットしても、市場を独占できるのはわずかな期間であり、マスコミ等で取り上げられると必ず二番煎じ、三番煎じが現れます。
このような後発企業は、最初の製品を世に送り出す場合と比較してマーケティングや製品開発に労力や費用をそれほどかける必要がないためコストが安くなり、販売価格も低くすることができます。市場シェア向上を狙って価格競争を仕掛けてくるかもしれません。
先発企業にとってはせっかく自社開発によって今まで存在しなかった新たな製品やサービスを世に送り出したのに、後発企業によって市場が荒らされてしまうと先行投資を回収することすらできなくなるおそれがあります。
このようなトラブルに巻き込まれないようにするためにも、先発企業にとっては新しい技術やデザインを権利で守ることが大事になります。具体的には、新しい技術やアイデアは概して特許権で、また新しいデザインは意匠権で守ることができます。
これらの権利は、新しい技術やデザインを記した書類を特許庁に提出し、特許庁審査官が審査することにより得られることができます。
このように特許権や意匠権を獲得すれば、後発企業が市場に参入しようとするときの抑制力になり、二番煎じ、三番煎じのパクリ行為を牽制することができます。

不用意なプレスリリースやSNSでの情報公開にはご注意を

特許や意匠の書類を特許庁に出願(申請)する際に気をつけなければならないのは、既に世の中に新しい技術やサービスが知られている状態で書類を特許庁に出しても特許庁審査官の審査により拒絶されてしまうことです。
とりわけベンチャー企業やスタートアップは新製品や新サービスをプレスリリースすることにより認知度を上げるため社長や経営者が先走ってしまうことがありますが、特許庁に特許や意匠の出願を行う前に世の中に発表してしまうと肝心の権利を取ることができません。
また、最近はSNSで不用意に新サービスの内容を書いてしまうことにより、思わぬ形で情報が拡散してしまう例も見受けられます。
このため、新製品や新サービスについての情報は社内で厳格に管理を行い、会社の外に情報を出すときはどの部分まで出してよいか、また情報を外部に出す前に特許や意匠を特許庁に出願(申請)する場合は必ず発表前に行うように留意しましょう。
もしどのような情報を会社の外部に出してよいか分からない場合は、弁理士に事前に確認することにより不用意なトラブルを招いてしまうことを未然に防止することができます。